むかし、片平に『かまあな』という所がありました。『かまあな』からはきれいな水が湧き、付近一帯の水田を潤し、豊かな暮らしが続いていました。
その穴にはたくさんの蟹が棲んでいて、蟹を取ると祟りがあって水が涸れると伝えられていました。
ある年の夏、農民が『かまあな』の近くを通りかかると、それはそれは大きな蟹が現われて昼寝をしていました。農民はこの大きな蟹に驚いて、急いで村に帰って話をしたところ、この村の親分といわれていたカクワという男が、
「そんな大きな蟹が現われたのでは子供等に危害を及ぼしかねない。殺してしまおう。」
と、この大きな蟹を殺してしまいました。
この蟹が死ぬと同時にあれほどたくさん湧き出していた『かまあな』の水がみるみるうちに少なくなり、付近の家々の井戸水も出なくなってしまいました。村人達は、飲み水がないので困りましたし、丹精込めた水田の稲が枯れる始末です。
この話を聞いた片平城主は大変心配をして、蟹を殺した農民を叱るとともに、親分カクワを所払いにしました。
こうして蟹の霊を弔い、供養をしたので村人たちは飲み水にも田の水にも困らなくなり、前と同様豊かな暮らしができるようになったそうです。