十二瞽女橋

栃木県塩谷郡高根沢町

昔、この地に門付けに来た二人の瞽女が花岡付近を流れている五行川に架かる橋に差し掛かった。瞽女は目の見えない女が三味線を引きながら家々を回る旅芸人で、いつも目の見える者が案内して歩いている。その日も目の見える瞽女が先にたって目の見えないゴゼを案内していたが、どうしたはずみか、その目の見えない瞽女が足を滑らせ下を流れる五行川に落ち、大きな渦に飲み込まれてしまった。
やがて、その橋のたもとには白い蛇が見られるようになった。渦に飲み込まれた瞽女はその時一二歳だったので、その橋を「十二瞽女橋」と言うようになった。(『子どもが書いた ふるさとの伝説集』・菊池重雄)

『高根沢町史 民俗編』より

花岡を流れる五行川にはいくつかの橋があるが、今は小さい川で皆小さい橋なので、五行橋くらいしか名がわからない。話の感じからいえば、これはその橋を渡ることを禁ずる何か(冠婚葬祭の行列など)の由来を語る話のようだが、現状話以上のことはわからない。

戦後までも、このあたりには越後瞽女たちがやってきたというから、そもそも瞽女さんたちがそこで語るものだった話のようでもある。ともあれ、話を見る以上はとくに強い恨みがあって蛇になった、という風ではないだろう。ただ、残念ゆえその魂(白蛇)がいまだそこにいる、という話のように思える。