大谷津の鏡が池

栃木県芳賀郡市貝町

昔、星の宮神社から北に、大谷津城があった。その裏には今はない大池があり、城のお姫さまがお伴を連れてよく散策していた。池に映る城と姫はそれは綺麗で、池は鏡が池と呼ばれていた。

お姫さまも村人も平和に暮らしていたが、世は戦国。宇都宮氏と連合していた佐竹勢が攻めてきた。ところが、攻め込むお城がどこにもないのだった。大谷津の地形は霧をよく出したが、その霧が一段と濃くなり、城を隠したのだ。

佐竹勢は血眼になって城を探したが、一週間が過ぎても霧は晴れず、ついに城攻めは諦めて烏山に引き上げたという。鏡が池の発する霧が大谷津の地形とともに城を隠したので、鏡が池は別名「城隠しの池」とも呼ばれた。

民話きじばとの会『いちかいの民話』より要約

大谷津城址は今もあり、星の宮もある。伝説の鏡が池は本丸の西にあったといい、今もくぼ地がある(大池というほど大きくはないが)。那須七騎千本氏の千本城の支城であり、大雑把には那須一族の城である。