上阿久津に虚空蔵さんと呼ばれるところがある。昔、上阿久津に富蔵どんという人がいて、怠けるのが好きで山遊びばかりしていた。その日も大好きなグミを探して、虚空蔵さん(星の宮神社の所)のグミの木まで来た。そして木に登り、夢中になってグミを取っては食べしてた。
すると、どこからか「と、み、ぞ、う、どーん」と声がする。しかし、富蔵どんはグミに夢中で聞いておらず、何度か目のその呼びかけにようやく気がついた。富蔵どんが辺りを見回しても、人はおらず、石の虚空蔵さんがあるばかり。はて、と思ってふと下を見て、富蔵どんは仰天した。
木の下では、ものすごい大蛇が大口をあけて、富蔵どんをひと呑みにしようとしていたのだ。富蔵どんは木から飛び降り、夢中で走ってとある人家にたどり着くと、倒れて気を失ってしまった。怠け者の富蔵どんでも可愛く思う虚空蔵さんが、石の口を開いて危機を知らせてくれたのだった。それから富蔵どんは働き者になったという。