昔々、あるところにおじいさんとおばあさんと娘が三人で暮らしていました。おじいさんとおばあさんは、娘に早くいい婿さんをみつけてやろうとしましたが、なかなかいい相手がみつかりませんでした。
ある日のこと、娘が家を出ていって、晩方遅く帰って来ました。それから、同じことが幾日も続くのでおじいさんとおばあさんは心配して、
「どうして毎晩遅いか」
と聞きましたが、娘は何も言わないので、余計心配になりました。
そのうち娘は馬鹿に腹が大きくなってきたので、
「その腹どうしたのだ」
と聞いたら、娘は小さな声で、
「男といい仲になって、その男というのが毎晩迎えにくるので……」
と言ったのです。しかし、それでもおじいさんとおばあさんは心配で、
「こんど男が迎えに来たら、その男の着物に針で赤い糸を縫いつけて来なさい」
と教えました。それで娘はいう通りにしました。
おじいさんとおばあさんが、その赤い糸をたぐって行くと、糸は沼地の方へ続いているので、
「おれは大変だ、娘の相手というのは沼の主の大蛇に違いない」
と、またまたびっくりしました。
それからおじいさんとおばあさんは、風呂を沸かして菖蒲の葉とよもぎと娘を一緒に入れました。そして娘の腹の中の大蛇の子を堕ろしました。
それからは、恐ろしい大蛇が来ないようにと願い、軒先に菖蒲の葉とよもぎの葉を突き刺すようになったということです。