昔、おじいさんとおばあさんと娘が暮らしており、娘にはなかなか婿が見つからなかった。そうしているうちに、娘の帰りが遅くなることが続き、心配して尋ねてみても答えないのだった。しかし、娘のお腹がばかに大きくなって来て、さすがに隠し通せなくなった。
娘は、男といい仲になって、毎晩迎えに来るのだという。そこでおじいさんとおばあさんは、今度男が来たら、着物に針で赤い糸を縫い付けて追うよう教えた。娘が言う通りにし、赤い糸をたどってみると、糸は沼地のほうへ続いていた。
男と思っていたのは沼の主の大蛇に違いない、と驚いた娘が、またおじいさんとおばあさんに教えられ、菖蒲の葉とよもぎを入れた風呂に入ると、腹の中の大蛇の子は堕りた。これより、大蛇など来ないようにと、軒先に菖蒲の葉とよもぎの葉を突き刺すようになった。