釜が淵

原文

昔、村に住む相思相愛の釜之助とお藤の二人はある日山へきのことりに出かけた。ところが深い淵のそばを通りかかった時釜之助が足をすべらし、その淵の中に落ちてしまった。お藤はくるったように釜之助を探し求めたが見つけることができなかった。

そうしてお藤は淵をのぞいているうち、水に映った自分の姿が竜に化しているのに気づき、おどろいたお藤は釜之助のあとを追って淵にとび込んでしまったという。

その後何日かたったある日村人がこの淵のそばを通りかかると二匹の竜がからみあっていたという。いつしかこの淵は村人たちから釜之助が落ちたということから釜が淵とよばれるようになった。

また、日でりで困った時にこの淵に石や汚物を投げ入れると、淵に住む竜神が怒って大雨をふらすということも伝えられている(上永野)。

『粟野町誌 粟野の民俗』より