鷲明神と七色の沼

茨城県結城郡八千代町

山川沼の東北になる粕礼。天日鷲命を祀る鷲明神には、山川沼の大蛇が臍の宮あたりに落としたという尻尾が今も蔵されている。忌部の祖が安房から坂東へ進み、穀木(ゆうき)を植えていったので結城というという。この鷲明神にあった池には、また不思議な言い伝えがある。

昔、酉の日のこと。あるおばあさんが鷲明神に参ると、池の水が瑠璃色に光り、少しずつ色を変えて群青色に染まった。さらも朱色や橙色と、水の色が変わることに驚いたおばあさんは、村の人にこれを知らせた。ところが、後日押し寄せた村の人たちには、全く池の色に変化は見られないのだった。

池の色が七色に変わるなどあるものか、と嘘吐き呼ばわりされて、おばあさんは腹が立ち、来る日も来る日も鷲明神に通ってじーっと池をのぞき続けた。すると、また酉の日に池の水は七色に変わるのだった。すぐにおばあさんは村の衆を連れて来て、この様を見せ、目の当たりにした皆もこの不思議を知ったという。

平岡雅美『八千代の伝説と昔話 下』
(八千代町教育委員会)より要約