天王免のクロ

原文

現在の十番、自動車や自転車で走る道路ができ交通の便利さを感じさせてくれている。これは昔に振り返ると口伝がある。前川をはさんで潮来と十番小さな江間、大きな江間が数多くあった。その江間から江間へは丸太や、木で造られた橋が掛けられ人々の通り道となっていた。天王免(現在もある小字)のお話です。

ある時十番の親孝行の息子が潮来まで買い物に行き、夕暮れの帰り道、嵐にあってしまい急いで帰ろうとした時、突然天王免の橋がこわれて流されてしまった。孝行息子は大変驚き途方にくれ、あっちへいったりこっちへ来たり困ってしまい、じっと橋の流された方を見ながら思案をしていると、突然ゴーという音とともに、今までなかった橋がかかったのです。びっくりした孝行息子は、おそるおそるこの橋を渡り終わって、「ありがとう」と声をかけるとこの橋はまたどことなく消えてしまった。孝行息子は急いで帰りこのことを話すと村中のさわぎとなり、これはきっと水神森の主(蛇)ではないかとうわさが広がり、そこに水神様を祀ったのです。(潮来)

水郷民俗研究会『潮来の昔話と伝説』より