昔、真壁郡の山田に山田の大蛇(おろち)という大盗賊がおり、物や婦女を盗るのでみな恐れていた。しかし、これを退治する者がなかったので、近隣には美しい女がいなくなり、大蛇は稲田の稲田姫に目を付けた。
大蛇は懸賞金をかけて姫を連れてこさせようともしたが、館は厳重で近づけない。そこで、女を一人館へ忍ばせ、館の家来たちを酔わせて、姫を連れ出そうとしたが、姫は動かない。そこで合図の笛を吹くと、大蛇自らが館に乗り込んできた。
ところが、稲田姫はすっくと立ち上がるや宝の刀を抜いて、一刀のもとに大蛇を切り殺してしまった。この姫が、稲田神社に祭神として祀られている稲田姫だったという。