上君田の十殿様

原文

昔、水戸様が来たそうで、やっぱりね、あれ、神社をみんな潰していぐそうだと、水戸様っちゃ。それえ、嘘だが本当だが、伝説によるとねえ。

そうして、潰すにかがったんだっちが、一人で行ったんだねえんだっぺげんと、水戸様ね。

そうして、行ったところが、こんだあ、すごい、その、蛇(じゃ)っていうのがあったんだが、無えんだが知んねえが、ぐるぐるぐるぐると、とらめえ(からみついた)だと。

ほんで、あんまり身苦しいぐなったんだが、

「身苦しいがら、姿を変えで出でこう。」

って言ったそうだ。

そうしたところが、お姫様になって出できた。

そういう話は聞いだ。そんじ今もって、そのために潰さんにぇで。

注 神社をみんな潰して=光圀は寺院改革、神仏分離を行った。

話者 佐川鶴雄(上君田)

 

ここの十殿(じゅうどの)さんていうのはなんですか。徳川さんの時代に能のない神は、潰して歩ったとかっていう話を聞いたんです。

そしたところが、この、上君田の十殿神社、そのお宮が鳥居まで、ずっと、蛇になって、ずうっと長く尾を引いで。

徳川さんも、これは能があるって言って、残されたとかいう話は、昔の人から聞いたことがあったけど。

話者 佐川貫(上君田)

高萩市教育委員会『高萩の昔話と伝説』より