横川滝

原文

そごは、大昔、人もまあ、おそらぐ、ながなが行がんにゃかったんだねえげえ。気持ぢ悪いほどあそごらが茂ってで、ほんでそのう、水戸黄門様時代がなあ。

んで、横川滝(よっかあだぎ)っていうと、だいぶ評判があって、その滝さ来て入っと、はあもう帰った人ねえって、そのう、言ったんだそうだ。

そんで、黄門様、

「そんなすごい滝だら、俺行って見できっかなあ。」

って、家来の助さん、格さんを連れてきたんだろう。そして、来て入って行ったそうだ。

したら、入って行ぐとぎには、滝の所を入って行ったんだげんとも、たいした水も落ぢねえで入っていった。入って行って、奥さこう行ってみだら、水も何もそごは流れちねえ。こう、段になって、座敷のようなどごに石があって、その上にお姫様がいだ。

「なんさ来た。」

「いや、そのう、皆来て、こっこ出でっぺっと、帰った人無えっていうがら、何がいんだが、見に来たんだ。」

って言ったそうだ。

そしたらば、

「二度と来んでねえぞ、今度来れば、帰らんねがんな。今度だけは帰してやっから。」

って言ったんだって。

そんで、帰っぺと思って、出べえと思ったら、今度は、水が落ちてで出らんねえんだっちよ。んでえ、「これ、入ってくっとぎには、水が無がったのに、なんで、これ水があんのが。」と思って、滝の中出らんねがらと思って、考えでいだんだっちけ。

んでえ、あんまり、それ、家来が待ってでも来ないがら、「隠居さん何してんのがなあ。」と思って、どうがなったのがなと、迎えに行ったら、そうしたら、そういうわげで、出らんねえでいで、助さん、格さんでもって連れ出した。そして助かった。

話者 長谷川幸吉 横川

 

類話:まったぐ、水戸様は、横川滝へ入って、せづな(せつない)滝だって言ったけんと。営林署へ出でっとき、ポンプ屋で砂利運び出したがら、そんで、あれ、入ってみだの。そうったら、水戸様入って、せづな滝だって言ったけんと、おいら入って、せづな滝じゃなかったって笑ったけんと。

話者 佐川鶴雄 上君田

 

類話:横川の一の滝、二の滝、三の滝があって、その滝に、水戸様が入ったらば、出口が分かんなくなっちゃって、出口探している間に、三年たっちゃって、

「水戸黄門だがら帰してやんが、さもなげれ帰さね。」って言われで、帰ってきたって聞いでますね。

話者 大島義光 横川

高萩市教育委員会『高萩の昔話と伝説』より