とびら淵

原文

あれ、大荷田っていう所へ行く途中にね。ずうっと下、下がっちゅうと、川が流れでっとごにとびら淵っていう所があんの。深あいとごね、ほんとに。それごそね、大蛇が何が住むようなとごね。そごんとごの向がいっ側の山に、高い山で、摺鉢のかっこしてでね。

そんで、下君田が日照りで田が作らんにぇので、その、摺鉢山にね、深あぐなってっから、そごに水がいっぱい溜まってだんだと。

そんで、そごんどご堀っ切って、あの、水を出したんですと。出して、下君田のほうの田さ流したんですと。

そしたら、その、摺鉢山から、子ども抱えだお姫様が、旗竿を抱えで出できて、そして、その、とびら淵っていうね、下君田からずうっと上さ行ぐとあんだよね。そごの川さお姫様が飛び込んだんですと。そのお姫様は、あの、蛇だね。大蛇だ。

大蛇になんのは何年とが言ったっけな。千年とがなんぼくらいかがんですってね。そうただないと大蛇にはなれねんだってね。んだがら相当長ぐね。

それは、本当の話なんですと。

注 大荷田=高萩市下君田宿を流れている川の上流にあり、宿より約四キロメートル北にある地域。

話者 豊田ヨツ(上君田)

高萩市教育委員会『高萩の昔話と伝説』より