大山沼の大蛇

原文

昔は土手は、利根川の水をちょっとせきとめる程度で小さかったんですね。その辺に四斗樽といわれる蛇がいたんですよ、そこの大山沼のあたりで、三六〇町もあった沼ですよ。見わたす限り沼で、まるで湖みたいだったです。

そこのへりにザワザワってあがっていて、沼の主だな、そこに横たわっていたというので、みんなで行ったらいなかったって。

またその次の日に、女たちが草刈りにいったら、またみたんだって、大きな口をあけてかかってきたんだってね。たしかに蛇がいるんだっていうことで、村の人がいくんちもいくんちも行ったところが、みつかんなかったって。

それで祟りがあっては困るってんで、そのときから、ツジドメっつうのを六月になっとやんですよ。竹を二本さしてしめ縄はって、蛇が村へきないようにってね。蛇もそうだけども魔物が村にきないようにっていう魔除けだね。

話者 昭和三年一二月一〇日生 石川津太郎

『古河市史 民俗編』より