金持の娘と蔵の中の美人

茨城県土浦市

昔、荒川沖に蔵の並ぶ大金持の家があり、美しい娘がいた。娘が盛りの十八歳を迎えた頃、蔵の中に一人で入ったことがあった。いつもならば母親やねえやが一緒に入るのだったが、その時ばかりは一人で入ってしまったのだという。

そして娘が蔵の二階への階段を上ると、並んでいる箪笥の前に若い女が一人立っていた。黒々と光る長い髪、抜けるような白い肌のその女は見たこともないほど美しく、丸い花柄の着物は、ぞっとするほど冷たい青い色をしていた。

その目に見つめられ、しばらく身動きもできなかった娘は、どれほどしてかやっと蔵から出ることができた。しかし、体中の力がすっかり抜けて寝込んでしまい、そのまま二度と起き上がることなく若くして死んでしまったという。

後になって、この蔵の中の美人は、昔から蔵の中に住み着いている蛇だったのだということが分かった。そして、そのようなことがあったので、その村では若い娘が一人で蔵に入ることを戒めるようになった。

土浦市文化財愛護の会『土浦むかし話』より要約