おちよ蛇類明神

原文

一人暮らしの貧乏な若者の家にりっぱな女が訪ねて来て夫婦になる。妻が妊娠し、夫は妻に何か食べさせようと町へ買い物に行き、帰って来ると妻の姿が見えない。妻の体の具合が悪くて寝ているのだろうと思い、寝室をのぞくと大蛇と赤子がいる。妻は夫の顔色が悪く震えているのを見て正体を見られたと感づき、「子供を庄屋に頼んで育ててもらうように」と言い置いて夫と別れる。夫は庄屋に事情を話し、子育てを頼む。その子が六歳の時に風邪をひき死にそうになる。夫は妻に最悪の時にはせんがんじの堤で「おちよ」と三回呼ぶように言われていたので、そのようにすると妻が現われ、薬をくれる。薬を飲ませると子供の風邪は治るが、風邪が庄屋にうつり、庄屋が重体になる。夫が妻にもう一度薬をもらいに行くと、妻は「これは自分の目の玉だが、庄屋は子供の恩人だから、これを持って行って飲ましなさい」と言って夫に渡し、「あとはどんなことがあってやってきても、私はこの世にはいないから」と言って水中に沈む。夫は庄屋に蛇の目の玉を飲ませ、事情を話す。庄屋はお礼に堤の土手に「おちよ蛇類明神」と書いた石碑を建てた。(飯舘村史 p.476)

 

(飯舘村小宮・女・梗概)

『日本昔話通観7』より