手長の仙人

福島県相馬郡新地町

昔、ある山に長い手をもった一人の仙人が棲んでいた。動物が好きで老いた鹿と白狼とを可愛がっていた。そしていつもこの山に腰をかけては、四方を眺めていた。或る日、腹がすいたので、あたりを見廻して、東の海に貝があるのを見つける。一つ食べてみると非常においしかったので、それからは、貝を常食するようになった。その貝殻は、麓の村に棄てられ、それが高く積って丘のようになったのが、今に残る貝塚ということである。この巨人を明神として祭り、山を鹿狼山と呼ぶようになったということである。(『相馬伝説集』)

『日本伝説大系3』より

元の題が何であるのかわからないので、仮に「手長の仙人」としておいた。ただし、お隣の伊具郡史などによると、鹿狼山手長足長明神といい、手も足も長かったともいう。

新地町では小川貝塚が対応していて、この手長明神を祀っていたという。小川二羽渡の二羽渡神社に合祀されたというが、鹿狼山頂の鹿狼山神社が手長足長を祀るともいう。