米の精

原文

何でも、奉公人がいでて。そして、とても米粗末にして。台所さ行げば、まんまはドサッドサッなげちまうとゆう、米は、ナガシさ、流しちまうとゆう。そうしているうちに、米っていう物は、ありがてえもんで。そして、米が蛇の精になって、白蛇になって。そうして、ドサリドサリぶん投げた奉公人の首さ、幾重にも、幾重にも、かっ絡まって。そして、とうとう、奉公人が、米の精の、米が蛇になって、そして、首にかっ絡まって死んじゃったって。だから、決して米ってゆう物は、粗末にすん物でねえって。ほっと(すると)、我がの首を我がを締めるようになっちまうって。

それは蛇でなく、一所懸命丹精して作った米を粗末にしっから。後で何も食わんねくなる(何も食べられなくなる)って、何て言うか、言い伝えでさえかなあと、俺、今は考えんの。それを昔の人は蛇に譬えて。で、米が粗末にしらっちゃあ、米が一粒、一粒、蛇になって、そっで、その人の首さ、こう、かっ絡まって。そして、その奉公人が、その蛇に締めらっち、死んじゃったって。で、決して粗末にすんもんでねえって。(西山字大平 関根ミツヱ)

ざっと昔を聴く会『東白川郷のざっと昔』
(ふるさと企画)より