反四郎坂と白兎 福島県河沼郡柳津町 昔、冬のある日、反四郎という男が飯谷山で一羽の白兎を見つけ、撃とうと銃を構えたところ、兎から御光がさして目がくらみ、途端に雪崩が押し寄せて、反四郎は雪に埋もれて死んでしまった。 この坂を反四郎坂というようになり、曲がり角に湧く清水は飯谷山へ行く人々の憩いの場である。件の白兎は飯谷大明神のお使いなのだといい、猟はしないほうが良いという。 あかべこさくら会『会津やないづの昔話』より要約 柳津総鎮守の飯谷神社は、只見川近くに下りた野老沢(ところざわ)に鎮座され(「飯谷神社と野老沢」)、奥の院が西にそびえる飯谷山中腹にあるというが、跡地といって石祠があるようだ。反四郎坂もその間にあると思うが、不詳。 さて、特に竜も蛇も出てこないこの話だが、飯谷大明神はまた龍蔵権現といったといい、兎がお使いであるのだという。すなわち、兎と竜蛇の関係(「竜になったうさぎ」)が語られていたかもしれないのがこの飯谷山なのだ。 龍蔵権現なるものがなにものかというのもよくわからないが、現在の飯谷神社の主祭神は安閑天皇があてられるようであり、蔵王権現であったのかもしれない。兎と竜蛇というと住吉の神がまず注目されるが、ここはそういうわけでもなさそうだ。 飯谷山が大地震で崩れた際にできた白沼には、飯谷山にいた大蛇が移り住まった、などという話もあり(「白沼のおこり」)、この山の神が兎を使いとする一方、竜蛇神であったらしいことは確かにうかがえる。そこにどのような脈絡があるのかはまだ不明だが。 ツイート