ショウブ湯の由来 福島県伊達郡川俣町 むかし、ある山伏がない、山奥の滝さあだってけえってきたら、ずない蛇さ追っかげらっちゃど。なんともおっかなくなっちゃって、逃げ場がねえもんだがら、ショウブとヨモギのおえっどこさ、逃げ込んじまったんだと。ヘビはほれがきれえなもんだがら、真っすぐ行っちまっで、命拾いしたんだってない。その日が五月の節句だったんで、ほれがら、厄払いとしてショウブ湯たででへえんだと。（羽田 佐久間キヨノ） 川俣町文化財保護審議会『川俣の昔ばなし』（川俣町教育委員会）より 菖蒲湯の由来はむしろ蛇聟（「蛇に見込まれた娘」）の筋で語られるものだが、ここでは蛇聟・蛇女房の筋はなく、単に大蛇から逃れる方策としてだけ菖蒲の茂みが出てきている。そして、それで助かる理由は一般には「蛇は菖蒲が苦手」だからなのだが、ここではそうはなっていない。 蛇は菖蒲が「きれえなもんだから」目を奪われて山伏を見逃してしまっている。このように「菖蒲が苦手」ではなく、菖蒲が蛇の目をだます、とする事例がいくつかあり、注目している（「食わず女房」など参照）。 ツイート