泉田の松の木のはなし

福島県伊達郡国見町

小坂に大きな木が三本あった。宗返山の入り口の大ケヤキ、もう一本は大ソネ、あとの一本が、阿部林右エ門様の側にあった大松だ。そこの小さい神様熊野様のところにあった大松の話。

この松は、夕方になると、泉田から山崎・藤田のあたりまで日陰になるほどだった。その頃は三軒しか家がなかったが、一軒に娘が母と暮らしていた。その娘が、毎晩きれいな若い衆が通ってくる、というので、母は糸団子を作って裾に一針縫ってやれ、と教えた。

そのようにして翌日糸をたどると、それは件の大松の木からぶら下がっていた。そこに大蛇が住んでいるというのは皆知っていたので、若い衆の正体は大蛇であると思い、娘も腹の様子がおかしいという。それでしょうぶ湯に娘をいれたら、蛇の子がぞくぞく出たという。

松の枝から作られたまな板は一メートル以上もあって、阿部林右エ門様に今もある。松の切り株は畳五畳敷きもあったという。

国見町教育委員会『国見の民話』より要約

ここでは、そういった大樹から蛇が蛇聟として通ってきている点が注目される。そもそも、大樹の精の話は蛇聟の話と近しいのだが、大樹の精が蛇だというなら同じことになる。