深山さま

原文

小坂に蛇の神様、深山神社ってのあってな。むがし、養蚕が盛んな頃、蚕じょうぞくさせっと、ねずみに繭食われるんだ。そのために、深山さまに、卵上げっつうどそごから、蛇来て、守ってくれるなんて、みなして、卵持ってったもんだ。

私ら、ほれ、学校、二、三年の頃だから、学校帰り、それ、すすってくるわけだ。みなしてな。いや、いやしいようだが、その頃は、お菓子は、買って食わんにぇ、家は貧乏だべし、みなして、卵でもすすって行ぐがってなる。

新卵だがんな。みな朝上げた、新しい卵だもんな。

(小坂 朽木松吉)

国見町教育委員会『国見の民話』より