オチカミさまと安産

原文

南太平の小室には新藤という家があり、その主人が会津の山の神に七年間も草鞋ばきで拝みに行きました。その信心のため、お移しを貰い、明治二年(一八六九)この小室にむかえました。

またこの祠のそばに小さな祠があり、これをオチカミさまといい、七、八十年前、子が一人死んだので、うらなってもらうと長虫のたたりだというので卵を呑んだ蛇を殺したことが思い当たったので、さっそくお払いをうけました。

また蛇の神を馬鹿にして山にのぼると、からだがきかなくなって、おりられなくなるといわれています。この山の神の境内の岩間から二年ほど前の十一月八日に二本角のある蛇が出ました。

この蛇はアルコールづけにして今でもあるとのことで、山の神のお使いだと村人がさわぎました。山の神は安産の神で女だといわれ、お払いをうけ、新藤の家から出て、はじめて会った人が男の人だと男の子、女の人なら女が生まれるといわれています。

生れた後、赤ん坊をつれてお礼まいりにきますが、早くくるとその後のお産が近いといって、一年ぐらい過ぎてからきた方がよいといわれています。

(国学院大学民俗学研究会『年刊 民俗採訪』)

いわき地方史研究会『いわきの伝説と民話』より