オチカミさまと安産

福島県いわき市

南太平の小室には新藤という家があり、会津の山の神に七年通って、明治二年にお移しを迎えた。この祠のそばには小さな祠があり、オチカミさまという。子どもが死んだので占うと、長虫の祟りだといい、たしかに卵を呑んだ蛇を殺したことがあったのでお払いを受け、祀ったものだという。

蛇の神を馬鹿にして山に登ると、体が効かなくなって下りられなくなるといい、山の神の境内の岩間から二本角の蛇が出たこともあるそうで、今もアルコール漬けにしてあるという。山の神の使いだと騒ぎにもなったが、山の神は安産の神で女だという。

お払いをして、新藤の家から出て、はじめに会った人が男なら男が生まれ、女に会うと女が生まれるという。また、赤ん坊が生まれてから、連れてあまり早くにお参りすると、後のお産が近いといって、一年ほど過ぎてから参るのが良いともいう。

いわき地方史研究会『いわきの伝説と民話』より要約

四時川を上って行った先、田人村のこととあり、今の田人町南大平の話となる。お屋敷神のことのようで以上のこと以外は全くわからない。「おちかみ」なる名が何を意味するのかも不明。

それにしても角のある蛇が出たというのも興味深いところだ。そのアルコール漬けの蛇というのは、今もあるのだろうか。