鮫川の御前淵

福島県いわき市

石城郡の鮫川の上流約一二、三キロメートルのところに、御前淵と呼ばれているところがある。年に一回ずつはこの川に鮫が上ってきたので鮫川と名づけたのだという。山田村大村の人がこの淵に落した山刀を捜しに入り、三年目に村に帰ってきた。その日が七月七日の七夕にあたっており、その人は水中で乙女の機を織るのを見たそうだ。それから毎年七夕の夜、もろこしで機をつくりこの淵に入れて祭りをするという。(『石城郡誌』)

『日本伝説大系3』(みずうみ書房)より

勿来の北を流れる鮫川に御前淵はある。今はもう往時の深い淵の様相ではないようだが、川部町地内となり、四時(しとき)川が鮫川と合流する少し上流部となる。