藤石の藤と櫟

福島県郡山市

むかし、鬼生田の柳田高地という山奥で大きな石を割って、その渕から藤が出て来た。それは傍の大きな櫟の木にからまりついた。
ある山師がその櫟の木を切ろうと斧を入れたら眼がつぶれてしまった。その櫟の木に刃物を入れる人には必ずわざわいが起きた。それからは木に刃物を入れる人がないという。あるときは、その櫟の木から血が出て来たということである。(伝承地 西田町鬼生田:「郡山市史 民俗資料カード」)

郡山市教育委員会『郡山の伝説』より

鬼生田(おにうだ)は田村将軍と戦った鬼の生まれた地との伝を持つところだが、このような不思議な藤もあったという。ただ、阿武隈川のほとりであって、山奥というのがどのようなところを言っているのかはよくわからない。柳田高地というのが不明。

また、大石を割って、渕から藤が出た、とはどういうことだろうか。さらに、不思議な出自を語っているのは藤のほうなのだが、祟るのは藤の巻いた櫟のほうなのでもある。少々筋がこんがらがってしまっている話なのかもしれない。