大蛇の橋

原文

帰城をいそぐ殿さまが、小岩沢まで来ると、村人は、川が氾濫して橋があちこちで流されたと知らせた。気のせいている殿さまは、川のすぐ前まで来てみると、流れたという橋が架かってある。篭を降りた殿さまが、杖をつきながら橋を渡り終えて後を見ると、欄干が橋の真中に立って、そこに二つの目玉が光っている。そこで初めて殿さまは、大蛇が殿さまの急を知って、身を挺して橋の代わりになってくれたと知った。殿さまは蛇に感じ入って、持っていた杖で頭を撫でてやろうとしたが、誤って、蛇の目に杖を突きさしてしまったので、それからは、この辺の蛇はみな片目になったという。

『南陽市史 民俗編』より