五十騎町の猫明神

原文

五十騎町の侍の家で、そこの奥方は猫を大変かわいがった。ところがそこの奥方が厠に行くと必ずついてくるので、気味わるくなり、主人にいうと、猫は魔もの、きっと何かあるにちがいないと思っていた。そのうちに奥方は体をこわし、血の気がうすくなる病気になってしまった。その日も奥方が厠に行くと猫もついて行くので、猫の首を切ってしまった。すると猫の首はそのまますうっと厠の天井に飛び、そこでもみ合っているうちに、どさりと落ちてきたのを見ると、猫の口は大蛇を噛んでいた。蛇が奥方の血を吸っていたことを知り、猫を祀って「猫明神」とした。今でも、猫が子を産むと猫明神に持って行く。必ずもらい手が見つかるという。

『米沢市史 民俗編』より