五十騎町の猫明神

山形県米沢市

侍の奥方が猫をかわいがっていたが、厠にまでついてくるようになったので気味わるくなった。主人にいうと猫は魔物であるから何かあるかもしれないという。その内に奥方は血の気が薄くなる病になってしまった。

これは猫が取り憑いたに違いないと、猫の首を切ってしまった。すると猫の首が厠の天井に飛び、もみ合って落ちたのをみると、猫の首は大蛇を噛んでいた。奥方の血を吸っていたのは大蛇で、猫は奥方を守ろうとしていたのだった。

これにより猫を「猫明神」として祀った。今でも、産まれた猫の子を猫明神に持って行くと、必ずもらい手が見つかるという。

『米沢市史 民俗編』より要約

また、猫を祀るというのは本邦ではかなり最近のことと思われ、その役割も集中している。すなわち鼠捕りだ。殊に、養蚕機織りをする人の間で猫を祀るのはよく見られる。猫明神のある場所は米沢織のメッカであり、今も機業家が多いという。