ナリガミサマ

岩手県大船渡市

雷は、恐いものとしての反面、水神として、農業に水をもたらす神として崇拝されてきた。古くは小童や蛇の形をもって現われるものと考えられ、〝荒ぶる神〟として祭られてきた。

気仙地方では、雷のよく鳴る年は豊作だといい、落雷した場所には小さな祠を建てたものだという。雷神は竜蛇と関係した司雨神であり、また「ホウリョウ神(法量神)」も蛇神なので、両者は〝親戚〟の神だという。

雷は気仙地方では「オレァサマ」と称しているが、これは、「御霊(ごりょう)信仰」を想起させる語である。また「ゴロゴロさま」という幼児語も使用されているが、雷神信仰は農耕生活と深い関係を持ち、広く信仰されていたものと思われる。

『大船渡市史 第四巻 民俗編』より

ほうりょうさんや、近い存在といわれるうんなんさんそのものに関してはまた多くの話が必要となるので、それそのものは別に追う。ここでは、東北に接する北関東などの雷や竜蛇の話の中に、ほうりょうさんを思わせるものがあり、それらから参照するために引いた。

この大船渡りの話は、その実態が胡乱であるほうりょうさんを蛇神であると明言している事例となる。竜蛇らしきなにかであるというのはどこもそういうのだが、こうはっきりいうのは珍しい。信仰圏にはその牙であるとし、石鏃などを宝と蔵する話なども見える。