目の見えねえ和尚さんが神社に泊まったって。神社に泊まっている和尚さんの後さ毎晩人ぁ来てる。「お前ぁ何て人だべ」て、和尚さんが聞いだ。したけぁ、「吾ぁ、人でねえ。こごの池にいるものだ。年とったけぁ身体も太くなったし、そして池も小さくなって、吾ぁこの村を沼にする。誰さも話してはならない。話すればお前の命ない」って言らいだんだて、その和尚さんが。
「したども吾ぁ一人助かってもなにもなねし、このぐらいの村も、村の人も殺してしまれば困る」って、村の人さはなしたって。話して今度、その村の人ぁ、この戸さまさ釘打ったんだって。釘打ったのぁ、そういうのさ釘ぁ毒だって聞いだったも。釘ぁ池の主の身体さ毒だそうだ。へて今度、釘、みんな戸のさまさ、塀でも釘打ったんだって。へてこの村つぶされないなって、池の主ぁ逃げるどき、その和尚さんの背中さ爪ひっかけで飛んで行ったって。(下北稿 No.61)
下北郡東通村尻労・女・表題話
下北稿……『日本昔話通観』編集委員会 1979(『下北半島の昔話』として近刊予定)