池の主の知らせ 青森県下北郡東通村 盲目の和尚がある神社に泊まったが、毎晩和尚の後ろに来る人がある。和尚さんが、お前はなんだ、と尋ねると、声は自分はこの池のもので、年をとって身体は太くなり、池が小さくなったので、村を沼にする、人に話せばお前の命はない、といった。 しかし、和尚は自分一人が助かっても仕方がない、と村人たちにこのことを告げた。皆は、釘は池の主の身体に毒だと、戸や塀に釘を打った。それで村は潰されずに済んだが、池の主は逃げる時に、和尚の背中に爪を引っ掛けて飛んで行ったという。 『日本昔話通観2』より要約 下北半島の東側の先端、東通村の話。さらにその先のほうの尻労(しつかり)で得られた話というが、舞台は不明。琵琶法師と竜の話型だが、反対側津軽半島の五所川原市の嘉瀬には、それがおしら様の由来だという話もある(「たこと盲人」)。 こちら東通村の話で興味深いのは、琵琶法師と竜の話で竜蛇が苦手とする釘・鉄杭を打つのは、通常そのヌシの住む池沼や山を囲って封じるように打つのだが(「富士七巻の大蛇」など)、ここでは里の家の戸や塀を封じているところだ。 十和田湖のほうには、八郎太郎に関して、その往来を恐れて、戸窓に菖蒲・よもぎをさす「戸窓ふたぎ」の風習があった。釘でふさぐわけではないが、その意図するところは同じである。下北にどういった風習があったかは知らないが、関連して覚えておくべき話と思う。 ツイート