白髭神社

青森県八戸市

八戸市市川町橋向に鎮座している。祭神は武内宿禰、例祭日は六月十五日、由緒沿革は不詳といわれている。「略 里人は竜神と呼ぶが、つまびらかならず、相殿は稲荷三座、明治五年本村より祀る。熊野宮二座、天満宮、支村轟より祀る。漁光神不詳、支村和野より祀る 略」(『新撰陸奥国誌』)

伝承では元禄五年(一六九二)の創立といわれている。藩政時代、海岸に打ちあがる「寄り鯨」は貴重であった。この浜にも「寄り鯨」があがり村を潤した。この白髭神社の境内にある「漁光大明神」は、文化三年(一八〇六)に捕獲した鯨の尻尾からノルウェーの鯨銛が出たことを記念して、頭と銛を埋めて、同年六月六日に石碑を建立したといわれている(滝尻善英著「南部の碑は語る」)。

『八戸市史 民俗編』より

市川町の白髭神社は今も鎮座されている。五戸川下流となるが、かつてはその河口近くという場所であったようで、奥入瀬川の河口も合流するところだったという。

東北地方各地で、雪解けの大水や、大雨などの大水を「白髭水」と呼び、これを神と祀るところがままあるが、この白髭神社もそうであると思われる。それが竜神だ、と語られている重要な事例と言えるだろう。

白髭水が襲うときは、これを白髭の老爺が知らせるといい、奥入瀬川のほうを少し遡った旧下田町地区間木にある(現状は不明)白髭大明神の祠には、奥入瀬川が大洪水のとき、前ぶれに白髭の老翁が川とともに流れてきて、洪水の警戒を告げた、という(『下田町誌』)。