赤保内の殿様の娘

青森県八戸市

むかし、階上町赤保内の殿様が、隣の殿様へ娘を嫁にやることにした。途中に大沼があり、遠い道を行くより、沼の狭くなった所に橋を架けて渡ることにした。そこで、両家で金を出しあって橋を架けて嫁を送り出した。ところが途中で、ホロド沼の主「大蛇」に捕まり、一同は喰われてしまった。

赤保内の殿様は、娘の仇討ちをするため、村人の鉄砲隊に命じ、蟇(がま・ひきがえる)の皮で作った「蟇笛」で、大蛇を誘い出し鉄砲で撃ったが、逃げられた。

大蛇は村人達に追いかけられ、階上町の角柄折(つのがらおり)で角を折られ、道仏(どうぶつ)で胴を切られ、茨島(ばらしま)で骨をバラバラにされ、大渡で尾っぽ(しっぽ)を切られ、耳ヶ吠(みみがほい)で耳をもがれ、石鉢で肉を切り取られた。

そして、大館地区に入り、花生(はなおい)で鼻を切られ、野場で野ざらしにされ、新井田で肉を切られ、館越(館串)で串ざきにされ、吹上で吹きとばされたという。

『八戸市史 民俗編』より

地名の由来を語る大蛇討伐の話も、殿様の娘の話だけではなく、村の娘であったり色々にあるようだが、それにしてもこれだけ周辺の地名を一筋で語ろうとしたというところも珍しいのじゃないかと思う。