ホロド沼の伝説は「水神さまである大蛇」の物語である。
八戸市の水道の水源の一つに妙地区蟹沢の藤助の湧き水がある。この湧き水は、石灰岩地層から湧き出て水質もよく、夏でも冷たく、水温は年間を通して十度前後に保たれ、八戸一といわれるほどおいしい水である。
階上町大渡にあったホロド沼には水神である大蛇(または年を経た大鮭)が棲んでいたといわれている。。
ホロドとは、アイヌ語のホロトがなまってホロドとなったらしい。ホロは大きいということで、トは沼で、ホロト「大きい沼」の意味であり、いつの間にか「ホロド沼」と呼ばれるようになったが、今は沼はなくなり雑木林になっている。
ホロド沼の近くに鮫や湊に通ずる道があるが、この道を通る若い男女が次々と、どこかで、姿を失い見えなくなってしまった。若い男が通ると、きれいな女の子がたたずんでいて話しかけたり、美しい女が通ると鮮やかな服装をした若者が声をかけて寄ってきて、どこかへ誘っていった。
こうして、赤保内村の若い男女が次から次へと消えていったり、恐ろしい目に遭うので、村人は、マタギを頼んで退治することにした。
村人は沼の大蛇を誘い出すため、沼の近くで神楽をやって待っていると、見知らぬ娘が現われた。村の古老は「あの娘が怪しい、沼の主だ、早く退治せ!」と言った。その話を聞いた娘は走り出し、沼へドブンと飛び込み、みるみるうちに大蛇になった。マタギが鉄砲で撃ったとたんに大蛇の姿が消えた。
何日か過ぎたある日、ホロド沼の水がゴーゴーと音をたてて、七筋に分かれて流れ出し、ホロド沼は干潟になった。蟹沢の藤助の湧き水もその一つであるといわれている。